全日本選手権ロードレースでReady Go JAPAN福本選手がジュニア女子優勝!

6月27日・28日の2日間にかけて広島県中央森林公園にて「全日本自転車競技選手権大会ロード・レース」 が開催された。この2日でおこなわれた4レース・6カテゴリー (U17男子、U19男子、U23男子、 エリート男子、エリート女子、ジュニア女子)において2009年度の日本で一番強いロードレーサーが決まった。 レース開催中の広島県・ 三原市にある中央森林公園は広島空港のスグそば。レース中も引っ切り無しに 広島空港を離発着する飛行機を相当、間近な距離で見られる。会場近くにはホテルもあ り、広島市内へも 空港から往復するシャトルバスなどを利用し観光が出来る立地。コースは1周12.3kmと日本国内にある クローズドサーキットの中では最長の周回コー スである。 その会場にJCFが提示した一定の基準をクリアした日本人選手たちが集まる。

Ready Go JAPANチームの面々も 関東・関西班と分かれつつ集合。27日開催のU23レースの終了後を待って、RGJ監督とともに試走を入念におこなう。 試走には明日の 「決戦」を控えた他チーム所属の女子選手の姿もチラホラ。このコースでは全日本ロードを 含めて、年間数回ロードレースが開催されている自転車レースファンや選手に とっては「おなじみの場所」 ではあるが、今年は少し意味合いが違ったと思う。 1つは、エリート男子レース。このレースに先日、日本人としては今中大介氏以来、13年ぶ りのツール・ド・ フランスに出場が決定した新城 幸也(Bboxブイグテレコム)と別府 史之(スキルシマノ)のうち、 新城選手が出場すること。もう1つは、エリート女子では 沖 美穂(昨年で現役引退)が11年間に渡り守り 続けていた女子ロードチャンピオンの座を誰が獲得するのか?ということであろう。

そのせいか、男子・女子両エリートレースが開催される28日は
朝から観客たちが会場に集まっていた。昔、10年近く前に同じ
会場で開催された、同じ全日本レースに出場したことがあるが、
その際に取材をした時は 選手やチームの関係者でない、純粋
な観客はたったの4人(しかも、その4人もたまたま公園に遊び
に来たついでに観に来ただけ)だった、という状況から考えれば、
このとこ ろの自転車への注目を考えあわせても 相当、進歩し
たように思う(考えようによっては、昨今のネット普及で情報が
集めやすくなったという こともあるように思うが)。

私たちは、補給所近くで場所を確保するため早朝にホテルを出
て会場入り。学校のため遅れて合流となったRGJ福本千佳とと
もに、提携クラブチームのサイクルファクトリーARAIの隣に場所を
無事に確保して 準備開始。メカニックやチーム監督は機材の準
備や補給の仕込みなど忙しく動く。

一方で選手達も 朝食を摂りながら、前日に講習を受けた方法で
サプリなどを摂取。しばらくしてウオーミングアップを開始。現在、
日本で唯一の女子チームであるRGJが、選手6名全員でローラー
を並べてのウオーミングアップは かなりインパクトのある光景だ
ったようで、RGJのチームテントへ見学に来られる観客の方も多
かった。


今回の大会において、女子レースはジュニア対象(=18歳未満年齢)となる
高校生選手も含めて47人がエントリー。
前列の選手で・左より2人目が今選手権大会の女子エリートで12年ぶりに優勝を
果たした、西加南子(フォーカス・アウトドアプロダクツ所属:黒と青 のジャージ)。
彼女はトップベテラン選手ながらここ数年、全日本選手権では上位に
食い込むものの優勝はまだなかった。

そして出走サインなどの最終準備も終えて、スペアのホイールや
予備の補給を持って、スタートラインに向かう。ここには蒼々たる
面々が朝8時のスタートコールを待って集まっている。 萩原 真由
子は「あさひレーシングチーム」所属1年目だが、鹿屋体育大学
自転車部時代から数々の成績を あげている選手。日本人離れし
た身長のうえに手足の長さが目を引く。彼女は先日、開催された
全日本 ロード個人タイムトライアル選手権で優勝し、今年度の全
日本タイトルを既に1つ獲得している、今大会の 最有力候補だ。

豊岡 英子は、パナソニックレーシングチーム所属のロードとシク
ロクロスの選手。特に、全日本シクロ クロス選手権では4連覇とい
う馬力が自慢。ただ、今シーズン初頭の海外遠征で大きめの怪
我負って、復調 し始めたところである。

シクロクロスといえば、この選手も注目必須であろう。急遽出場が
決まったオランダ在住の荻島 美香。 2009年2月のシクロクロス
世界選手権では前出の豊岡選手を置いて22位という成績を残し
た2児のママ。

シクロクロスの選手もいる一方で、ナント日本MTB界の女王・片
山 梨絵も今大会に参戦。スペシャライズド 所属で、北京五輪の
MTBクロスカントリーの日本代表である。

MTBもこなすロード選手、といえば森田 正美。ブリヂストンアン
カー所属で、2008年のMTB北京五輪選考会で 骨折して、一時
レース参加を休止していたが、ようやく2009シーズンで復帰。こ
こまでのレースでは快調だ。

女子ロードのベテラン勢の姿もある。西 加南子選手(フォーカス
・アウトドアプロダクツ所属)は ここ数年、全日本選手権で上位に
食い込むものの、優勝はまだなし。さらに、西の元チームメイトで
ある 森本 朱美選手はシドニー五輪のトラック日本代表。彼女も
あと一歩のところで全日本選手権での優勝がない。 今回はお互
いにどうなるか?!

若手もCHISAKO(=針谷千紗子:宇都宮ブリッツェン所属)や井
上 玲美の 姿もある。ジュニア対象(=18歳未満年齢)となる高
校生選手も含めた47人エントリーという人数は「勝ち」を 狙いに
きた気合を感じる数字である。


トップ集団で粘るRGJ福本千佳選手(中央)

快晴で気温の上がるなか、定刻にスタートしたレースは、序盤から
非常に早いスピードで一気に先頭集団が 十九人までに絞られるサ
ドンデスとなった。さらに、そこからの展開は今まで数年間の全日本
ロードの 女子レースでは見られなかった。序盤から仕掛けた選手を
全員で追いかけるという動きはなく、残りの距離を 計りつつ泳がせ
る「余裕」と「読み」が出来ている様子。

そして、積極的にアタックをかける女子選手が、 次々に先頭を引っ
張っては集団に吸収される、という「ちゃんとした自転車レース」が
展開されていた。 そんな中、高速展開の先頭集団に福本千佳が
残っていた。同じ集団には福本選手とともにジュニア女子である、
上野みなみ(八戸工業高校)もいたが、周回を重ねているうちに
上野 選手が脱落。でも福本選手は エリート選手たちに混ざって頑
張り、 後半まで集団で粘った。

RGJ吉井 玲香は下り苦手にもかかわら ず、今まで以上に克服し
て健闘。自転車走行の技術が非常に向上 して きており、さらに
元々登坂力はバツグンなので、全日本クラスで暴れる日は近いと思
う。 RGJ松田 千裕は、ようやく膝の故障も完治したようで、7月のい
わてステージとフランスレース出走への 手ごたえを感じた模様。
しかし、この2名はタイムアウトとなった。


ゴール手前の最後の登りでスパートをかけるRGJ松田千裕選手

自分のペースを確認しながら走るRGJ吉井玲香選手

集団の一番前に出るRGJ下久保初菜選手(北桑田高校の紫ジャージ)

さらに、多くの選手が先頭集団から早々に脱落するも必死で追い続け
ていた。RGJ下久保 初菜は途中で パンク!そんな彼女を集団に戻す
ためにRGJ堀 友紀代が後ろに下がって待つ。だが、集団復帰に時間
のかか ってしまった下久保選手。結局タイムアウトとなってしまった。
出だしが良かっただけに残念。

その直後、堀選手は1つ前の集団にいたRGJ武田 和佳と合流。しかし、
この2名もあと少しのところでタイムアウトとなり、先にタイムアウトして
しまったRGJ選手もいるので、たった1人残る福本選手に大きな期待が
かかった。

女子レースの最後はRGJ監督・須藤大輔が「厳しいコースであるが、ア
タックをかけても意外と直接的なライバルは減らない。有力選手はしっ
かりと最後まで残るのでスプリントまでいかに先頭集団に残るかが肝」
という予想をしたとおり、最後の最後となる、ゴール直前のスプリントを
制し、西 加南子が12ぶりの「全日本ロード女王の座」を獲得した。

しかし今回、RGJチームにとっては その後が重要であった。ゴールは
次々を選手がゴールするが、福本選手の姿も、彼女の名前のアナウン
スも まだない。3時間近く、約86kmを走りきってゴールを果たす選手たち
は皆、疲労困憊で「途中で両脚が攣った」 「脚が辛すぎて途中で止まっ
てしまった」などという声が聞こえる。こんな辛いレースを無事にゴール
出来るのか?


ジュニア選手に混ざり頑張るRGJ武田和佳選手(川越工業高校の青ジャージ)

中盤集団の前を引くRGJ堀 友紀代選手

ジュニア女子の部の表彰式にて。
左より、2位:上野みなみ(八戸工業高校) 、優勝:福本千佳(RGJ)、
3位:岩田知夏(北桑田高校)、おめでとう!!

そしてアナウンスが「ジュニアでトップのReady Go JAPAN福本選手が、
まもなくゴール!」と伝える。 その直後、福本選手の姿を確認して安心
した。落車もしてないようだし、頑張ってゴールラインに 向かってくる!
あとはゴールするだけ。

ゴール後からは一番、彼女が不思議な気持ちでいたと思う。小さい頃
から自転車に乗るも、現在通う高校に自転車部がないため、高体連レ
ースに出場が出来ないハンデ。それでも地元クラブシルベストで練習を
重ね、 ロードとシクロクロスでセンスと力を磨いた。現在もRGJとの提
携でシルベストにはお世話をしていただいて 彼女は大きな結果をその
手に掴んだ。それはRGJチームにとっても初めての全日本タイトル獲得
にもなった。

表彰式に向かう中、観客に「小さいね!」と驚かれた。確かに、ちっちゃ
い選手だけど彼女の将来は とても大きく広がっている。その福本選手
の晴れ姿を祝うRGJチーム選手全員が目指す先は彼女と一緒。
「世界での活躍」だと思うのだ。

そういえば今回、全日本ロードで女子6位に入賞した荻島選手は、
1997年に女子版の「ツール・ド・フランス」 にあたるツール・ド・フェミナン
に日本人初で出場した実績を持つ。さらに昨年までの日本ロード女王
であった 沖選手も数回、このツール・ド・フェミナンに出場し完走も果た
している。しかし当時、その快挙を自転車 専門雑誌以外で大きく取り
上げるメディアはなかった。 この状況を打開できるのは、今がチャンス
なのかもしれない。だからこそ国内で活躍しながら、もっと女子で 実は
一足早く世界で、特に女子版「ツール・ド・フランス」完走実績を積んで
いる、という事実を含めて 自転車レースをもっと広めなければいけない。

そんな大きな役目と期待がRGJチーム所属の女子選手たちの小さな
背中にかかっている。

*福本千佳・優勝コメント

会場での応援ありがとうございました。応援してもらえるのがすごく嬉し
くて、力になりました。 まず自分が完走できるとも思っていなかったので
頑張れるだけ頑張ろうと思って走りました。 今回ジュニア優勝できたの
は皆さんの応援,チームのサポートがあっての優勝だと思っています。
本当にありがとうございました!

これからも高体連のレースには出れませんが実業団レースなどで頑張
っていこうと思うのでRGJチーム、並びに福本千佳をよろしくお願いします!


ジュニア女子上位の3人で記念写真!笑顔がイイね!!

久しぶりにRGJレギュラー選手6名が集まった今レース。チームで頑張りました!

第12回全日本自転車競技選手権大会ロード・レース:結果
http://www.jcf.or.jp/

*女子結果(総合):44名出走・22名完走
1位 西 加南子(TEAM FOCUS-OUTDOOR PRODUCTS)2h35'14"
2位 森本 朱美(スミタラバネロパールイズミ)
3位 片山 梨絵(SPECIALIZED)
4位 豊岡 英子(パナソニック・レディース)+02"
5位 森田 正美(チームブリヂストン・アンカー)+07" 
6位 荻島 美香(ARAI-MURACA)+1'13"
7位 CHISAKO(宇都宮ブリッツェン)+2'10"
8位 星川 恵利奈(muur-king.com)+2'56"
9位 井上 玲美(チームコラテック)+5'23"
10位 萩原 麻由子(サイクルベースあさひ)+5'50"
11位 牧瀬 翼(MUURZERO)+7'08"
12位 早坂 ありさ(鹿屋体育大学)+8'58"
13位 志村 みち子(ラブニールあずみの)+9'03"
14位 福本 千佳(Ready Go JAPAN)+9'06"
15位 上野 みなみ(八戸工業高校)+10'14"
16位 智野 真央(MUURZERO)+11'13"
17位 唐見 実世子(CLOKヒロシマ)+11'38"
18位 木村 亜美(鹿屋体育大学)+12'45"
19位 岩田 知夏(北桑田高校)+12'50"
20位 鈴木 遊(倉吉総合産業高校)+12'59"
21位 藤井 絵理(Bicinoko.com)+13'02"
22位 堀 記理子(クラブシルベスト)+13'05"

*ジュニア女子上位3位の結果 ※上記より抜粋
1位 福本千佳(Ready Go Japan)2h44'20"
2位 上野みなみ(八戸工業高校)+1'08"
3位 岩田知夏(北桑田高校)+3'44"


エリート女子の表彰式。
左より2位:森本 朱美(スミタラバネロパールイズミ)、
インタビューを受ける優勝: 西 加南子(TEAM FOCUS-OUTDOOR PRODUCTS)、
3位:片山 梨絵(SPECIALIZED)
写真撮影:RGJチーム事務局、福本 範子(写真端に日付のあるもの) 記事:RGJ事務局 須藤むつみ

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