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ロード 男子エリート・レポート

一向に縮まない逃げグループとメイン集団との差は、最後までゼロになる事が無いままフィニッシュ。しかし勝ったのは、チャンピオンに相応しい実力を持った者だった。

午前8時、定刻通りスタートする男子エリート

スタート直後に発生した逃げが続く

男子エリートのレースは、当日の天候悪化が予想された事から距離が短縮され、221.2kmで争われる事になった。

スタートラインに並んだのは120名。ディフェンディングチャンピオンの新城幸也(ユーロップカー)は、エントリーしていたものの出場を見送った。一方、新城と共にジロ・デ・イタリアを完走した別府史之(TREK FACTORY RACING)は予定通り出場。2日前のタイムトライアルでは堂々の1番時計を出して「まずは1勝」し、好調さをうかがわせる。誰もが別府を中心にレースが動くと予想する中、午前8時、今にも雨が降りそうな空の下スタートした。

パレード区間が終了し、リアルスタートと同時にアタックがかかる。登り区間に入ると11名の逃げグループが形成された。メンバーは以下の通り。

リアルスタート直後に形成された逃げ集団

野中竜馬
木村圭祐(以上シマノレーシング)
綾部勇成
平塚吉光(以上愛三工業)
井上和郎
伊丹健治(以上ブリヂストンアンカー)
阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
山本隼(チーム右京)
佐野淳哉(那須ブラーゼン)
山本元喜(ヴィーニファンティーニ・NIPPOデローザ)
武井享介(Shingha Infinite)

主要チームがメンバーを送り込めた為、集団はこの逃げを容認。スタート直後から降り出した雨と、場所によって濃くなる霧もあって、差は一気に3分以上に広がった。

メイン集団では、別府が前に出てペースアップを図るものの、差はなかなか縮まらない。2分を切るところまで縮まったかと思えば、また開く。追撃の意思がまとまらない一方、11名の逃げグループはペースを保って周回を重ねる。レース終盤に向けて天候は回復していくが、逃げグループとメイン集団の関係は変わらないまま進行していく。

逃げ集団は足並を揃えて周回を重ねる

メイン集団はレース後半になっても足並みが揃わない

鐘(ジャン)の音と共に最終周回に入る千頭3名

残り2周、20名程度まで絞られたメイン集団と逃げグループとの差は1分以上離れている。一方、逃げグループからは佐野、井上、山本の3名が抜け出す。この動きで逃げ集団は崩壊。バラけた後続に追う勢いが無いまま、レースは最終周回に突入。勝負は3名に絞られた。

最後の登り区間に入り、3名の協調が解かれ、最後の勝負が始まっていく。3名がそれぞれに仕掛けるが、決定的な動きにならないまま残り1kmを過ぎる。そして最後に抜け出したのは佐野。残り100mを単独で通過すると勝利を確信し、何度もガッツポーズを繰り返しながらフィニッシュラインを越えた。

逃げ切った佐野 追わなかった集団の意思

表彰式でチャンピオンジャージを着た佐野は、これまでの想いを語った。身体的にも精神的にもレースを出来る状態でなかったと言う昨年。その辛い状況を支えてくれた家族の事に言及したところで、佐野は感情を抑えきれなかった。

表彰台で男泣きする佐野。かつてのチームメイト井上和郎(ブリヂストンアンカー:左)が手をさしのべる

国内男子エリートの選手の中でも1、2を争う身体能力と独走力を持っていると言われてきた佐野。これまで、実業団レースの石川ロードや小川ロードなど、ハードなコースの厳しいレースで勝ってきた。全日本選手権では、NIPPO所属時代の2010年、宮澤崇史の優勝をお膳立て。自身は4位だったが、最後に残った4人の中で一番強かったと今なお語られる。今年から新興チーム「那須ブラーゼン」に加入し、シーズン序盤から復調の兆しを見せていたが、結成2年目のチームにいきなりビックプレゼントを贈った格好となった。

孤軍奮闘するも、最後まで勝負に絡むことなく終えた別府史之(TREK FACTORY RACING:前から2人目)

一方、メイン集団の追撃が不発のまま終わった事は、これもまた全日本選手権ならではなのかもしれない。過去にも、序盤に形成された逃げが最後まで逃げ切ってしまった事があった。(参考:2003年)この時も、メイン集団内にいた前年優勝チーム(シマノレーシング)の動きを他チームが気にしすぎるあまり、追撃の機を逸したままレースが終わってしまった。その時の図式と今年はよく似ている。今回は、別府の動きを他のチーム・選手が気にしすぎた事に加え、主要チームが逃げグループにメンバーを送り込めた事が、このようなレース展開となった原因と思われる。はからずも、別府が佐野の囮となったとも言えようか。

来年の全日本選手権は、那須ブラーゼンの本拠地でもある栃木県那須町で行われる。ホストチームでもあり、ディフェンディングチャンピオンチームとして全日本選手権を迎える那須ブラーゼンにとって、これからの1年は真価と進化を問われる1年となる。

(Text&Photo Satoru Kato)

クイックリンク

ー大会要項など
(公財)日本自転車競技連盟

ーコース情報など
那須サイクルフェスタ2015

ーロードレース開催地
那須塩原市
那須町

ータイムトライアル開催地
大田原市

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