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ロード 女子エリート・レポート

勝負は残り3kmの登り。先行する與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)との差は40秒。誰もが勝負はついたと思っていたが、萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)だけは諦めていなかった。

スタートラインに並んだ前年度上位5名

大分のデジャヴ

2年ぶりとなる岩手県・八幡平市での全日本選手権。前日までは夏を感じさせる晴天だったが、エリートのロードレース開催日は朝から雨。スタートに合わせるかのように雨足は強くなり、前年の大分を彷彿とさせる濃霧まで出て、視界は数mと最悪なコンディション。しかしレース後半に向けて雨はやみ、晴れ間も出るくらいまで回復した。

1周目 須藤むつみ(Ready Go JANPAN)を先頭に登り区間を行く集団

ロードの2日前に行われたタイムトライアルでは、萩原麻由子が與那嶺恵理を1分近く上回って圧勝。ロードでも萩原がタイトルを奪回するのか、あるいは與那嶺が連覇するのかが最大の注目点。一方で、徐々に表彰台の立ち位置を上げてきている金子広美(イナーメ信濃山形)や、昨年から頭角を現してきた合田裕美子(早稲田大学)、タイムトライアルで3位に入った上野みなみ(鹿屋体育大学)らが、どこまで勝負に絡めるのかも注目された。

30人がスタートラインに並んだ女子エリートは126.4kmで争われる。序盤は様子見のように大きな集団のまま進行。3周目に入り、レースが動き出した。

3周目 単独で先行する萩原麻由子(Wiggle Honda)

3周目 先行する萩原を追う與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)と針谷千紗子(Libe GARDEN BICI STELLE)

 

針谷千紗子(Libe GARDEN BICI STELLE)のアタックに萩原が反応。針谷の前に出ると、そのまま独走状態に入る。すかさず與那嶺も反応して追撃に出るものの、4周目の登り手前までに集団が吸収する。この動きで、先頭集団は14人まで絞られた。メンバーは以下の通り。

與那嶺 恵理(サクソバンクFX証券)
萩原 麻由子(Wiggle Honda)
金子 広美(イナーメ信濃山形)
上野 みなみ(鹿屋体育大学)
西 加南子(LUMINARIA)
崎本 智子(ナカガワAs'kデザイン)
合田 裕美子(早稲田大学)
樫木 祥子(駒澤大学)
小島 蓉子(日本体育大学)
斉藤 望(日本体育大学)
米田 和美(Ready Go JAPAN)
智野 真央(Neilpryde Men'sclub Pro Cycling)
針谷 千紗子(Libe GARDEN BICI STELLE)
牧瀬 翼(TEAM ASAHI)

5周目に入ったところで、女子先頭集団が男子集団に追いつかれそうになった事から、コミッセール判断でレースを一時ストップ。男子メイン集団を抜かせたところでレースが再開された。

6周目、14名の先頭集団は変わらず。萩原も與那嶺も集団中ほどに位置し、他の選手も2人の動きを見て牽制しているような状態で進む。

タイトル奪還への強い意志

7周目 登りでペースアップする與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)

7周目 先行する與那嶺を追う萩原麻由子(Wiggle Honda)

残り2周となる7周目、與那嶺が先手を打った。登りでペースアップすると集団は崩壊。萩原が追走するも、15秒の差をつけられる。その後方から上野、合田、金子、崎本、樫木、西、米田が続いていくが、萩原について行ける者はいない。勝負は與那嶺と萩原の2人に絞られた。

最終周回、長い下りで差を詰めたい萩原だが、逆に與那嶺に差を広げられる一方。登り区間に入る残り3km地点では40秒まで開いた。しかし、萩原は諦めていなかった。

「下りで差を広げられたので、これはマズイと思った。けれど、登りで與那嶺さんの姿が見えたので、諦めずに追いかけた」

1kmを過ぎるごとに10秒ずつ減っていく與那嶺とのタイム差。残り1kmを過ぎた時点で15秒。そして残り500mで射程距離に納めると、残り100mで與那嶺を一気にかわし、ガッツポーズと共にフィニッシュラインに飛び込んだ。

上野みなみ(鹿屋体育大)をおさえて3位に入った合田裕美子(早稲田大学)

3位には、上野を抑えて合田が入り、5位に崎本。6位には、フィニッシュライン上で西を差した米田が入った。

フィニッシュ直後に報道陣に囲まれた萩原は、一昨年のような勝っても憮然とした表情ではなく、晴れやかな笑顔だった 。

笑顔で報道陣の質問に答える萩原

目前で連覇を逃した與那嶺

「チームから言われたとは言え、昨年の全日本はなんで帰ってきたんだろうと自問しながら走っていた。結果が出せなかったのに、チームは今年の契約を更新してくれたので、それに応えたかった」

一方、勝利を目前にして敗れた與那嶺は、フィニッシュ後にスタッフに抱えられないと立てないほど消耗していた。

「精一杯でした。あれ以上ペースは上げられませんでした」と、潔く負けを認めた。

再び日本チャンピオンジャージでヨーロッパを走る萩原。その初戦となるのは、女子のジロ・デ・イタリア「ジロ・ローザ」だ。昨年も出場して完走しているが、日本チャンピオンジャージを着て走る今年も大いに期待したい。

(Text&Photo Satoru Kato)

クイックリンク

ー大会要項など
(公財)日本自転車競技連盟

ーコース情報など
那須サイクルフェスタ2015

ーロードレース開催地
那須塩原市
那須町

ータイムトライアル開催地
大田原市

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